芦名くんの隠しごと
“月森悟”
そう言われても、すぐにはピンとは来なかった。
けれど、転校生のことだと思い出して。
「同じクラスだけど。伊織の知り合い?」
「……まあ。アイツの親父さん、俺の恩人でさ」
「そ」
なにがあったのかは知らない。
だけど、夜な夜な出掛けている、いわゆる“不良”と呼ばれるような存在の俺たちにとっては、なにもないときの方がないくらいで。
夜の街にいるのは、大抵、なにかしらを抱えた人間だ。
だから印象に残っていたのか。
彼は、同じような眼をしていた。
「……アイツ、寂しがりだからさ、結構。もしよかったら、ときどき声かけてやってくれ」
「なに?そんなことをわざわざ言いに来たの?伊織は優しいね」