芦名くんの隠しごと
溺れて
*
「───ま、そんなとこだ」
コツリ、と
夏樹くんがブラックコーヒー入りのグラスを置く音が、やけに冷たく聞こえた。
「………」
「康生の本心は知らねえけど。花瀬や月森は裏切り者。それ以上も以下もねえんだよ」
『康生の本心は知らない』
本当にそうなのだろうか。
芦名くんはきっと今も、ひとりで何かと戦ってる気がする。
そしてそれは、紛れもなく、“誰かのため”。
「それから、懲りたのか……それが本当によかったのかはわからないけど、“冷酷無慙の芦名”っつー噂は、“死神の芦名”に変わったんだ」