芦名くんの隠しごと
芦名くんの住む部屋。
そう聞き、少しワクワクした。
けれど、見渡しても物は少なくて、芦名くんのことを知る手がかり……なんて欠片にすらならなかった。
「あの、芦名くんはいつもここに……?」
「そうだよ。一人でね」
「ひとり………」
こんな、寂しい部屋で、芦名くんは一人でいるの?
「俺も、ここで暮らしてるわけじゃないからね。と言っても、ほとんどここにいるんだけど」
「そう、なんですか……」
“なんで、こんなところに芦名くんを一人にするんですか”
その言葉は、飲み込んだ。言ってしまったら、感情的になってしまう気がしたから。
私が寝かされているベッド。
何も置かれていない机。
使ってないんじゃないかと思うくらい綺麗な椅子。
それと、制服とカバン、それとタンスらしきもの。それだけ。