芦名くんの隠しごと



「ごめん。こんなとこ連れてきたら、野乃に怖い気持ち思い出させちゃうんじゃないかって、迷ったけど……でも知ってほしくて。アイツのことも」


この“アイツ”というのはたぶん、月森さん……の、こと。


「……ああ、ごめん。アイツっていうのは、伊織のこと」


「花瀬くん……?」


えっと、なんでここで花瀬くんが…?


「まあ、月森も関係なくはないけど。メイン的には月森なんだけど。……でもアイツは野乃に勝手に触ったし、野乃に怖がられたままでいい」


「……っ、」


ダメだダメだ、ニヤけちゃう。

そんな場面じゃないはずなのに、拗ねたような芦名くんが可愛くて。


「……今さら、芦名くん以外に触ってもらいたい、なんて思わないよ」


< 225 / 279 >

この作品をシェア

pagetop