芦名くんの隠しごと
その声は、芦名くんの声じゃなかった。
「……伊織、なぜ貴方が」
「最初から俺は芦名に協力してた」
やっぱり花瀬くんは敵じゃなかった。
チラッと私の方を向いた花瀬くんが、“黙っててごめんな”と口を動かした。
ただ、夏樹くんたちは知らなかったらしく、少し驚いている。
「お前は“あのときの抗争”で芦名があいつを殺ったんだと思ってるようだけど、それはとんだ濡れ衣だからな」
抑揚のない声で、感情の読めない瞳で、花瀬くんが言う。
「……俺ら、調べてたんだよ、ずっと。あのとき芦名は誰も裏切ってねーよ。誰のことも傷つけてねえ。ついでに言うと、お前の弟も生きてる」