芦名くんの隠しごと
諦め顔でフッと息を吐いた月森と、なぜか目が合った。
警戒しながらも、その目を逸らそうとは思えなくて、じっと見つめ返す。
「……野乃さんにも、迷惑や心配をかけて、すみませんでした」
「へっ、あ、いえ……」
まさかそんなことを言われるなんて思わなかったから、慌ててしまう。
いま、すっごい噛んだ……。
それにしても、こうしてしおらしくしている月森は、なんだか普通の好青年に見える。
これは勝手な憶測だけど、もともとそんなに悪い人じゃないんだと思う。ただ、弟さんのことで周りが見えなくなってただけで。
「……で、悪いけど元凶は俺がボコッた。悟だと殺しちまうかもしんねえから。勝手にごめんな」
「いや……なぜ伊織が謝るんですか。伊織の言う通り、私がそいつに会ったら殺していました。私に殺人を犯させないようにしてくれたこと、感謝します」