芦名くんの隠しごと



誰もが驚くような低い声が教室に響いた。

わたしですら、あまり聞かないような声。


クラスメイトたちの顔が青ざめていくのがわかった。



「あ、芦名くん……!そんな人いないから大丈夫だよ!そんな怖い声出したら、みんなびっくりするよ……!」


「野乃はダメだよ。自分の可愛さをわかってない。それにおれは、野乃さえいてくれればそれでいい」



……ダメだ、聞いてくれない。

わたしはただ、芦名くんが今まで築き上げてきた友達関係とか、そういうものが崩れないか心配なだけなんだよ。


伝わればいいのに。

わたしのせいで……なんて考え方はあんまりよくないけど、わたしが原因で、芦名くんの周りから人がいなくなるなんてこと、絶対ダメだ。


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