芦名くんの隠しごと



そんなこと言わないけど、そう言ってもらえるのは素直に嬉しい。


って、今はそういう話じゃなくて。



「クラスの人にわたしたちの関係を話したこと、わたし、怒ったわけじゃないの、本当は」


「……拗ねてたの?」



“うん、そうだよ”と、声に出して返事をするのは恥ずかしかったから、わたしは静かに頷いた。



「……えっと、なんでまた」



芦名くんは、まさかわたしが拗ねていたなんて思っていなかったらしい。

少し焦ったような、戸惑ったような声色だった。



「だって……付き合ってることをみんなに言うとき、わたしにはなにも相談してくれなかったんだもん。芦名くんが勝手に決めて、勝手に言っちゃうから。わたし、寂しかった。ふたりのことだから、ふたりで一緒に決めたかったの」


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