芦名くんの隠しごと
「康生、水上はお前の後ろに乗せるんだろ」
「そうだね。夏樹の腰に手を回す野乃を想像するだけで……気に食わない」
「っ、」
やっぱり、芦名くんはズルい人だ。
そんなヤキモチみたいな言葉、きっとまた嘘なのに。
カンタンに私をドキドキさせてしまう。
「俺の後ろに乗って。…ちゃんと掴まってないと落ちるからね」
「う、うん」
バイクにまたがった芦名くんの後ろに近づく。
掴まるということはつまり、……抱きしめるような状態になるわけで。
恥ずかしすぎるけど、危ないからやらないわけにもいかない。
「し、失礼します…」
「どーぞ」
何がおかしかったのか、芦名くんは軽く笑っていて。
少し小言を言ってみたくもなったけど、そんな暇はきっとないな、ってわかったから渋々黙った。
私が乗っている間に、夏樹くんも自分のバイクに乗り終わっていたみたいで。
「俺が後ろ確認しながら行くから。康生は水上もいるし、先行ってろ」