芦名くんの隠しごと
生徒会長
*
はじめて乗ったバイクというのは、案外心地よくてクセになってしまいそうなくらい気持ちよかった。
そんな時間が十数分。
芦名くんがバイクを止めたのは、廃業寸前なカフェのような建物の、狭い狭いガレージの中。
「──着いたよ」
穏やかな雰囲気から一変して重々しい表情になった彼が、静かに言う。
「…仲間だけど危ない奴がいるから。俺から離れないで」
「……わかった」
芦名くんの言う“危ない”のレベルがどのくらいのものなのかわからないから、黙って頷くほかない。
けれど、芦名くんがこんなに言うなんて、相当怖い人なのだろう。
そう思いながら彼に着いていき、ガレージを出る。
そしてそのまま、レンガ造りの薄汚れた建物に近づく。
「…これ、ドアはフェイクだから。覚えといて」
芦名くんが「ほら、開かないでしょ」なんて言いながら、ドアを開けようとしてみせるけど、びくともしない。