芦名くんの隠しごと
温厚。優秀。人気者。爽やか。
そんな生徒会長はどこに行ったのだろう。
今の彼からは、攻撃性しか感じられない。敵意しか向けられていない。
芦名くんとはじめて話したときみたいに、足が床にくっついて。
「ちが…」
……恐怖で上手く、声も出ない。
身体中が震えてしまいそうになるけれど、必死に心を保った。
きっと、目を逸らしたらいけない。
「野乃チャン、何か答えてごらんよ」
「っ、」
次第に強くなっていく圧に、だんだんと心が折れそうになっていく。
じわじわ、じわじわと、私の精神を蝕んでいって。
「…っ……あ、う……」
情けない。
ずっと我慢していたのに、涙が溢れてしまった。
「楓…」
今まで私を見守ってくれていた芦名くんが、口を開いた。
今までに聞いたことがないくらい、低い声。
不謹慎だけど、私のために怒ってくれているんだと思うと、嬉しくなる。
「おーコワ。康生ってそんな顔するんだ。怒るんだ」
「……ふざけんなよ」