芦名くんの隠しごと
「ニガテ、です…」
楓さんが先輩だから、というよりは。
楓さんに苦手意識があるからってことが、主な原因だと思う。
…なんて、口が裂けても言えないけど。
「ま、何はともあれ、気楽に接してくれていいからさ」
「は…はい…」
まともに顔も見られないのに、気楽に接するなんて、無理な話だ。
「僕みたいなのがウラの世界にいるって知って、ちょっとびっくりしてる?」
「っ、はい」
「ウチ、病院なんだよね。……表向きは」
“表向きは”
そう言った楓さんの瞳に、ゾクリとした。
学校での“生徒会長”としての楓さんは、温厚で優秀な王子様で。
ハイスペックで甘いマスクだからというだけでなく、大病院の院長の息子だから…というのも、そう言われている理由の一つだって、聞いたことがある。
「…闇病院って知ってる?」
「やみ、びょういん…?」
「いわゆる、“そーゆー人たち”の面倒を見る病院のこと。ま、普通の病院もやってるけど、本業はそっちかな」