芦名くんの隠しごと



「ニガテ、です…」


楓さんが先輩だから、というよりは。


楓さんに苦手意識があるからってことが、主な原因だと思う。


…なんて、口が裂けても言えないけど。


「ま、何はともあれ、気楽に接してくれていいからさ」


「は…はい…」


まともに顔も見られないのに、気楽に接するなんて、無理な話だ。


「僕みたいなのがウラの世界にいるって知って、ちょっとびっくりしてる?」


「っ、はい」


「ウチ、病院なんだよね。……表向きは」


“表向きは”
そう言った楓さんの瞳に、ゾクリとした。


学校での“生徒会長”としての楓さんは、温厚で優秀な王子様で。


ハイスペックで甘いマスクだからというだけでなく、大病院の院長の息子だから…というのも、そう言われている理由の一つだって、聞いたことがある。


「…闇病院って知ってる?」


「やみ、びょういん…?」


「いわゆる、“そーゆー人たち”の面倒を見る病院のこと。ま、普通の病院もやってるけど、本業はそっちかな」


< 41 / 279 >

この作品をシェア

pagetop