芦名くんの隠しごと



そう言った孝也さんが、チラッと私の方を向いてウインクした。


…もしかして、孝也さんにも無害な存在だと認めてもらえたのかもしれない。


まあ、私ががんばったところで、きっと孝也さんにも力で勝てるわけないんだけど。


視線を夏樹くんに戻した孝也さんが、苦笑いしながら言う。


「楓はひねくれてるから。仕方ないよ。その分、康生とか夏樹が優しくしてあげれば?」


「孝也さんはどうするつもりですか」


「康生と夏樹の大事な人なら、俺も守るよ」


爽やかなイケメン発言をサラッとしちゃう孝也さん、かっこいい。さぞかしモテるんだろうな。


「野乃、時間まだ大丈夫?」


強引に連れてきたのを一応申し訳なく思ってるのか、芦名くんはどこか心配そうに聞いてくる。


「今日、親の帰り遅いから。……今日だけじゃないけど」


そう。
今日は用事があって仕事を早退してきたお母さんも、いつもは遅くまで仕事をしている。


「寂しい?」


「……うん」


母子家庭だから一生懸命働いてくれてるって、わかってるけど。


寂しいものは寂しい。


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