芦名くんの隠しごと
「俺たちが一緒にいるよ」
「へ…?」
それって、今はってことだよね?
…それとも。
「寂しいときはここに来ればいい。ここに来れば、だいたい誰かしらいるからさ」
「俺はいつもいるからさ」と付け足して笑った孝也さん。
「っ、はい…ありがとうございます……」
「ただ、」
と、そこで一旦切って、真面目な顔をこちらに向けた芦名くん。
「この辺は治安よくないから。学校から帰るときも、俺か夏樹か楓と一緒にいて。一人で帰るのは危ないから」
「う、うん…」
「水上は基本は康生が送ってくと思うが。康生がダメなときは俺か楓が送る。ぜってえ一人では帰んなよ」
「わ、わかった…!」
……ただ、芦名くんや夏樹くんはいいんだけど、楓さんと二人っきりは……怖い。
なるべく楓さんとは二人っきりになりたくないな……なんて、本人がいる前だし、きっと芦名くんも夏樹くんも孝也さんも、楓さんを大切に思ってるのだろうから、言えるはずもなく。
想像だけで込み上げた恐怖心を、グッと飲み込んだ。