芦名くんの隠しごと



「俺たちが一緒にいるよ」


「へ…?」


それって、今はってことだよね?


…それとも。


「寂しいときはここに来ればいい。ここに来れば、だいたい誰かしらいるからさ」


「俺はいつもいるからさ」と付け足して笑った孝也さん。


「っ、はい…ありがとうございます……」


「ただ、」


と、そこで一旦切って、真面目な顔をこちらに向けた芦名くん。


「この辺は治安よくないから。学校から帰るときも、俺か夏樹か楓と一緒にいて。一人で帰るのは危ないから」


「う、うん…」


「水上は基本は康生が送ってくと思うが。康生がダメなときは俺か楓が送る。ぜってえ一人では帰んなよ」


「わ、わかった…!」


……ただ、芦名くんや夏樹くんはいいんだけど、楓さんと二人っきりは……怖い。


なるべく楓さんとは二人っきりになりたくないな……なんて、本人がいる前だし、きっと芦名くんも夏樹くんも孝也さんも、楓さんを大切に思ってるのだろうから、言えるはずもなく。


想像だけで込み上げた恐怖心を、グッと飲み込んだ。


< 45 / 279 >

この作品をシェア

pagetop