芦名くんの隠しごと
「野乃、今日どのくらいまで一緒にいられる?」
「お母さんが帰ってくるまでなら…大丈夫」
といっても。今日もお母さんは仕事がある日とほぼ変わりなく、日付が変わる頃に帰ってくるんだろうけど。
だからいつもと同じく、お母さんと顔を合わせることなんてないんだろうけど。
「野乃ちゃん、晩ごはん、食べてく?」
「え…いいんですか…?」
いつも一人で食事するから、孝也さんがそう言ってくれるのは嬉しい。
けど、芦名くんはともかく、夏樹くんや楓さんは、私がいていいのかな。
「孝也さんの作る飯、めっちゃうめえぞ。水上も食ってみろよ」
「そーそー野乃ちゃん。孝也さんのごはんは食べないと損だよ」
どうやら夏樹くんも楓さんも歓迎してくれているようで、ホッとする。
「俺も、野乃がいてくれたら嬉しいな」
芦名くんのそんな言葉にドキッとしながらも、一生懸命平然を装い、「じゃあ、お言葉に甘えて」とだけ口にすると、芦名くんは満足そうに微笑んだ。