芦名くんの隠しごと



*


「はい、孝也特製オムライスだよ~。ケチャップはお好みでね」


「オムライス…!」


「あ、好きだった?」


「はい!」


オムライスは好き。そのうえ、誰がどう見てもおいしそうだし、夏樹くんと楓さんのお墨付き。


嬉しくならないわけが、期待しないわけがない。


「いただきます!」


「はーい。召し上がれ」


パクッと一口食べただけで、口の中にチキンライスのケチャップ味と、たまごの優しい味が広がる。


「おいしい…」


「そう?それはよかった」


安心そうに柔らかい笑顔を浮かべる孝也さんに釣られて、私も自然と笑顔になる。


「だから言ったろ、孝也さんの作る飯はうめえって」


「なんで夏樹が得意気なの」


ニカッと笑う夏樹くんと、呆れたように笑う楓さんと孝也さん。


芦名くんはそれを、微笑ましそうに眺めている。


「野乃、おいしい?」


「うんっ、幸せ……。こんなところに連れてきてくれてありがとう、芦名くん」


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