芦名くんの隠しごと
「それに、」と芦名くんは続ける。
「孝也さんだって昔は相当ヤンチャしてたくせに。今だってときどき、人殴るでしょ、孝也さん。目立つことしてないだけで」
えっ、そうなの?
でも、孝也さんもこんなところにいるってことは、何かしらこの世界と繋がりがあるのだろう。
それはつまり……そういうことをしても、おかしくないということで。
「孝也さん、あんな人畜無害そーな顔して、怒らせたらチョー怖いから。野乃ちゃんも気をつけた方がいーよ」
いつの間に来たのか、楓さんが隣でそう言った。
「ま、野乃ちゃんは孝也さん怒らせるよーなことしないだろうけど」
そう付け足して、楓さんは何事もなかったかのように「孝也さん、コーヒーおかわり」と、空っぽになったコーヒーカップを孝也さんに渡していた。
一気に孝也さんが気になって、孝也さんを見つめていたら、孝也さんと目が合って。
否定も肯定もするつもりがないのか、孝也さんは意味深に笑った。