芦名くんの隠しごと
「水上さん」
「は…はい…」
「そんなに怯えないでよ。傷つくじゃん」
「あっ…ご、ごめん…!」
私の知っている…ううん、知っていた芦名くんと、いま私の目の前で話してる芦名くんが、同じ人だとは思えない。
同じクラスの芦名康生くんは、明るくて優しくて爽やかな、笑顔がよく似合うイケメンくんで。
男女問わずに人気者。おまけに先生にだって一目置かれている秀才くん。
けれど体育の成績はあまり良くないみたいで、それほど女子にモテるわけではない。
“ちょっと残念なイケメン”
一部の女子からは、そんな風に言われてしまっていたりする。
そんな芦名くんとは本当にクラスメイトってだけで、それ以上も以下もない関係。
いつも周りに人がいる芦名くんと違って人見知りな私は、芦名くんと話したことすらなくて。
なにげに会話するのもはじめてだから、まず、芦名くんが私の名前を知っていたことにも驚きだった。