芦名くんの隠しごと
「水上さんって、面白いね。今までなんで話さなかったんだろう」
…それは、人気者の芦名くんと私なんかじゃ、属性が違うから。
「とりあえず涙拭いてよ。話はそれから」
そう言って、芦名くんはハンカチを差し出してきた。
渡されたハンカチを素直に受け取ると、芦名くんは満足そうに微笑んだ。
…人のハンカチ汚すなんて、なんか気が引ける。ちゃんと洗濯して返さなきゃ。
石鹼の香りがするそのハンカチで涙を拭う。
いい香りがしたからか、少し落ち着いてきた。
「あのっ…これ……洗って返すね」
「いいよ。あげる」
あげる、って。
今日はじめて話したクラスメイトにハンカチあげるって、なんか芦名くんは変。
「いいよ…!悪いし…!」
「それ持ってて。たぶん、巻き込むから」
「巻き込む……?」
巻き込むって、なにに?
また何かの冗談かと思ったけど、芦名くんの目は真剣そのもの。
……冗談でよかったのに、なんて少し思ってしまった。