芦名くんの隠しごと
遠回しに「離してください」と伝えると、藍さんは案外すんなりと離してくれた。
近くで見ても、やっぱり美人。うらやましい。
「野乃ちゃん、改めてはじめまして。藍だよ」
「えっと……水上野乃、です」
「かわいいなー。私、かわいい女の子大好きなんだよね」
「……えっと、」
私なんかより藍さんの方が、よっぽど可愛いんだけどなあ。
「友達になろ!むしろ親友!」
「友達……っ!いいんですか!?」
「もちろんだよ~!これからは、敬語も“さん”付けもナシだからね!」
「うん!」
私が元気よく返事をすると、藍ちゃんは強引に肩を組んできて、私にくっついてきた。
「芦名くん、おかげで友達できたよ!」という喜びと感謝を伝えるために、藍ちゃんに肩を組まれたまま彼の方を向いて、ピースサインをする。
すると彼は、少し困ったように笑いながらも口パクで「よかったね」と言ってくれて、それだけでまた胸が鳴った。