芦名くんの隠しごと
……そんなわけない。
芦名くんはきっと、私をからかって楽しんでるだけ。
“守ってあげる”なんて言ってくれたのは、きっと芦名くんの優しさだ。
だいたい、私を甘やかすなんてどうやって甘やかすの。
「百面相してる野乃、面白い」
「もー!藍ちゃん!」
「怒らない怒らない」
「怒ってはないけど……」
あんまりからかわないで……!って思っただけで。
「ミルフィーユ食べ終わったら、少し勉強したり遊んだりしよう」
「あ、うん!私もそろそろ食べるね!」
「うん、そうしなよ。私はもう食べ終わっちゃうよ?」
「はやい……」
藍ちゃんは喋りながらも食べてるから、もう本当にほとんどなくなっていて。
今は孝也さんにジャムスプーンをもらって、お皿についたクリームを取って舐めている。
そんな藍ちゃんを見て、私も少し急ぎながら、でも味わいながら、孝也さんが作ってくれたミルフィーユを食べた。