芦名くんの隠しごと
『あっはは。その調子なら大丈夫だね』
「だ、大丈夫って何が……?」
『さーね』
“じゃっ、切るねー”と、あまりにもアッサリと電話を切ってしまった藍ちゃん。
私はまだ、聞きたいことを聞けていなかったのに。
……かなりマイペースだ。
「女の子のお友達?」
「あっ、うん」
ニコニコと微笑んでいるお母さんに、ぎこちなく返事をする。
藍ちゃんはいい子だと思ってるし、私は大好きだけど………たぶん、お母さんが想像してる“女の子”とはまったく違うのだろうから。
「そう。野乃に友達ができたって、本当なんだね。私も嬉しい」
「──っ、あ、あのね、お母さん」
──ピンポーン
私の勇気の一言は、突然の訪問者によって遮られた。
お母さんは、「あとで聞くね」と玄関に向かってしまう。
どうせなら、勢いで言ってしまいたかった。
……けれど、言わなくてよかったのかもしれない。また新しい心配をかけてしまうのなら。