夕暮れのこの場所から君と始める
一体何を期待してたんだろう。馬鹿馬鹿しくなって帰ろうとした時、凛とした声で呼び止められた。


「また、繰り返すのか?それで本当にいいのかーー泉美」


一瞬時間が止まってしまったような、不思議な感覚に陥る。


長いこと呼ばれたことのない名前。もう永遠に呼ばれることもないと思っていた。大げさかもしれないが、本当にそう思える日々だったから。


海の蒼。きれいな瞳。


「……名前……」

うまく言葉にできないのに、その男の子はやわらかく微笑んだ。


「知ってる。誰も気づかないような道端の草花まで気にする人だなって、気になってたから。ダチが教えてくれたんだ名前。……おれは人の目とか評価気にするようなサイテーな奴だから、今まで話しかけられなくてごめんな」

「いえ……あり、がとうっ……!見つけてくれて、話しかけてくれて……!」


思いが溢れて止まらない。今までずっと色々諦めてきた、何もしなかった。でも今は。


「いいんだよ。ゆっくりで。どんなことでもいいから、小さなことでいいから、できたら自分褒めてやらなきゃな。おれだって、泉美だって、完璧じゃないんだし」




はじめて、良かったって思えたよ。



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