嘘つきの水槽
「…分かった。倉橋がそんなに嫌がるならこれから話しかけたりしないし、こうやって無理に押しかけたりしないから」


え?


突き飛ばされたように胸がトクンと音を上げた。


陵ちゃんはドアへ向かおうとする。


「待って…!」


陵ちゃんの袖を引く。


「嫌じゃないから!」


「じゃあなんで」


「だって陵ちゃんが…っ」


「俺が、何?」


陵ちゃんは私を落ち着かせるように優しく聞き返した。


いつもそうだ。


いつも、陵ちゃんは私の一歩先を歩いて、手を差し伸べてくれる。


「…陵ちゃんが女の子と話してるのを見たの」


「うん」


涙がパタパタと床に落ちた。


「いつか、陵ちゃんの隣に私じゃない誰かが並ぶかもしれないと思ったら、私…っ、私すごく嫌なみたいで。私、陵ちゃんのことが好きかもしれない…っ!」


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