嘘つきの水槽
「え、それで付き合ってないの?」


放課後、昨日観たホラーDVDの話から派生した陵ちゃんの話題に、伊月は目を丸くした。


「だから幼なじみだってば」


「いやいや、幼なじみだからって夜中に男の部屋行く?」


「だって今日DVD返却だったんだもん。あ、持ってくるの忘れた。一回家帰って陵ちゃんと返しに行こ」


「世捺、三好だって男だよ。何かあったらどうすんの」


ショートカットの毛先が猫みたいに逆立ちそうな勢いで伊月は言う。


何か、か。


ないない、陵ちゃん意外と小心者だし。


そもそもそういう仲じゃないんだってば。


「分かった。次はもう少し早い時間に行く」


「もう…ほんとバカ。いい?あたしたちは男に力でなんか勝てないんだからね!何かあってからじゃ…」


「遅いんでしょ。分かった、分かった。じゃ、私陵ちゃんと約束あるから!じゃあね!」


背中で伊月が「この聞かん坊」とため息をついたのが聞こえたけれど、振り向いたら話が長くなりそうなので我慢する。


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