旦那を守るのも楽じゃありません
私と先輩
朝の事務所の中、モーニングコーヒーを飲みながら私は表敬訪問先の警備の計画案に目を通していた。
すると朝から嫌味たらしい良いお声が私に向けられた。
「お前また間違えただろ?これ、内務省の書類…これは軍部へ渡す物だ」
私は顔を上げて良いお声の嫌味な男の顔を見た。
「何言っているんですか?昨日ジーク様が緑の箱に入れておいて…と言ったからその箱に入れたんですよ?」
「だったらどうして同じ箱に混ざってるんだよ」
「ご自分で寝ぼけて混ぜちゃったんでしょう!当て擦りはやめて下さい」
私はジークレイ様…ホイッスガンデ侯爵家の次男で王太子殿下補佐の先輩の顔を下からグイィ…と睨み上げた。
睨み上げたジーク様の顔は、女子も恥ずかしくなるぐらいのシミ一つ無い、たまご肌。睫毛も長く瞳は神秘的なエメラルド色。髪は白銀色で朝の光りを浴びて輝いている…けっ…これだから美形は…
「今、結構失礼なことを心の中で思ってないか?」
「い~え別に?それよりもいい加減執務室のソファで寝泊まりするのはやめてもらえます?朝来たら執務室の中におじさん臭が充満してて臭くて困ります」
ジーク様は目を剥いた。
「誰がおじさんだよっまだ24才だ!」
「あら?おほほ…今この空間で一番のおじさんじゃありませんこと?」
ジーク様はジロジロッと執務室横の事務所の中を見た。
はい、同じ事務官兼軍人の私21才を筆頭に19才男子の事務官と、たまたま居た軍の17才男子と新しく入った18才女子しかおりませんが、何か?
「ああいやだいやだ。物忘れの激しいおじさんの相手って…」
「なんだとっ…」
「朝からいい加減にしろ…。若い子達がびっくりしてるだろ?」
言い争いを始めそうな私達の前に颯爽と現れた方がいた。
「カイト様」
「おはようございます、カイトレンデス王太子殿下」
私は立ち上がって軍の敬礼をした。カイト殿下は、おはよ~と他の事務官にも声をかけてから執務室に入られた。
「ミルフィ~私にもコーヒー入れてくれ」
「賜りました」
カイト殿下に返事をして給湯室に向かったが、仕方ないので嫌味先輩にもコーヒーを作ってあげることにした。
ゴリゴリ…引き立てのコーヒーは良い匂いだね。手早く準備をすると執務室で打合せをしているカイト殿下と嫌味先輩ことジークレイ様にもコーヒーの入ったカップを置いた。
「ありがとうございます」
キチンと礼を言ってくるあたりはやっぱりお育ちだけは良いですね、ジーク様。
私は事務所に戻ってくると、チョコクッキーを口に入れて愚痴った。
「まったくさぁ~なんだよ、あの嫌みめっ!」
「ミルフィーナ先輩…」
「なあに?パルン君」
パルン君はわぁ…と叫びながら手で顔を覆った。
「俺の…俺達の夢を壊さないで下さい!」
「夢って何よ?」
パルン君は眉を下げて執務室を見詰めてから深く溜め息をついた。
「ジークレイ様は俺達…軍人の憧れでもあるんです。侯爵家の次男で眉目秀麗、おまけに類稀なる剣技の才に恵まれて、魔術の腕も魔術師団長クラス…」
「ふんふん…それで?」
「どんな時でも格好良くて女性だけでなく、同性の俺達の憧れの先輩でもあるんですっ。なのになのにぃぃ…一歩事務所に入ればミルフィーナ先輩と痴話喧嘩でボロカスに罵倒されているなんて、想像してませんでしたぁ!」
「痴話喧嘩…では断じてないけど、そりゃあ…ご苦労様。」
パルン君はまた、わあぁぁ…と嘘泣きかどうかは分からないけど、机に顔を伏せて泣いている。
「また、喧嘩相手がミルフィーナ先輩って言うのがね~」
と、今月新しく入隊してきたクラナちゃん18才も溜め息をついた。
「ミルフィーナ先輩とジークレイ様って…こう、見た目はものすごくお似合いじゃないですか?」
クラナちゃんが毒を吐く。見た目はね~そこは結構言われてきたから自覚はあるよ。
クラナちゃんはうっとりとした表情で説明した。
「まるでお二人は一対の姿絵のように綺麗で…家柄も釣り合いが取れていて…お似合いなのに…中身がね。あ、ミルフィーナ先輩は見た目に反して可愛いから私はギャップ萌えで、最高でしたけど…あの嫌み…失礼、ジークレイ様がねぇ。私的には裏切られた気分です」
そうなんだよね、私達の仲を知らない他部署の方々からは私達…ジークレイ様と私は誰もが認めるお似合いカップル…らしい。
家柄…ジークレイ様は侯爵家の次男、私は公爵家の三女なのだ…
私は見た目だけは涼しげなクールビューティーらしい。私の性格を知ると皆「やられた!」とか「裏切られた!」とか言うのがパターン化している。
「ミルフィーナ先輩って見た目ツーンとしてそうですけど、中身は肝っ玉母さんじゃないですか。その見た目で戦場に出て『パッケトリア王国最強の盾』とか言われてるけど…中身は世話好きのお母さんじゃないですか!」
大事な事なのか…二回もお母さんを連呼されてしまった。
「今日のチョコクッキーも美味しいですね。流石、お母さん!」
パルン君が泣くことをやめた?のか復活してきてそう言ってきた。
「お~い、ミルフィ」
カイト殿下に呼ばれたので、「はい只今!」と返事をして執務室に入った。
「明日から留守の間は頼むね」
カイト殿下は警備計画書に受領の印を押して私に渡した。
「7日間の予定ですね」
「何もなければ、もう1日早まるかもだけど、もし魔物が出たら陣頭指揮は頼む」
ええ?私が陣頭指揮ぃ?
そういえば…カイト王太子殿下と一緒に隣国のブーエン王国に表敬訪問の護衛でジークレイ先輩もお出かけだったよね。
ああ…ヤレヤレこれで7日は嫌味から逃れられるのか~
と、思っていたらカイト殿下に
「本当はミルフィにも一緒についてきて欲しいんだけど…ね。ほら~そんな顔するから誘いにくいよっ!」
苦笑しながら言われてしまった。え~7日もジーク先輩と一緒なの~?って顔をしていたと思うけど、どんな顔だったんでしょうか?
そうしてカイトレンデス王太子殿下とジークレイ先輩達は隣国、ブーエン王国に旅立って行ったのだった。
すると朝から嫌味たらしい良いお声が私に向けられた。
「お前また間違えただろ?これ、内務省の書類…これは軍部へ渡す物だ」
私は顔を上げて良いお声の嫌味な男の顔を見た。
「何言っているんですか?昨日ジーク様が緑の箱に入れておいて…と言ったからその箱に入れたんですよ?」
「だったらどうして同じ箱に混ざってるんだよ」
「ご自分で寝ぼけて混ぜちゃったんでしょう!当て擦りはやめて下さい」
私はジークレイ様…ホイッスガンデ侯爵家の次男で王太子殿下補佐の先輩の顔を下からグイィ…と睨み上げた。
睨み上げたジーク様の顔は、女子も恥ずかしくなるぐらいのシミ一つ無い、たまご肌。睫毛も長く瞳は神秘的なエメラルド色。髪は白銀色で朝の光りを浴びて輝いている…けっ…これだから美形は…
「今、結構失礼なことを心の中で思ってないか?」
「い~え別に?それよりもいい加減執務室のソファで寝泊まりするのはやめてもらえます?朝来たら執務室の中におじさん臭が充満してて臭くて困ります」
ジーク様は目を剥いた。
「誰がおじさんだよっまだ24才だ!」
「あら?おほほ…今この空間で一番のおじさんじゃありませんこと?」
ジーク様はジロジロッと執務室横の事務所の中を見た。
はい、同じ事務官兼軍人の私21才を筆頭に19才男子の事務官と、たまたま居た軍の17才男子と新しく入った18才女子しかおりませんが、何か?
「ああいやだいやだ。物忘れの激しいおじさんの相手って…」
「なんだとっ…」
「朝からいい加減にしろ…。若い子達がびっくりしてるだろ?」
言い争いを始めそうな私達の前に颯爽と現れた方がいた。
「カイト様」
「おはようございます、カイトレンデス王太子殿下」
私は立ち上がって軍の敬礼をした。カイト殿下は、おはよ~と他の事務官にも声をかけてから執務室に入られた。
「ミルフィ~私にもコーヒー入れてくれ」
「賜りました」
カイト殿下に返事をして給湯室に向かったが、仕方ないので嫌味先輩にもコーヒーを作ってあげることにした。
ゴリゴリ…引き立てのコーヒーは良い匂いだね。手早く準備をすると執務室で打合せをしているカイト殿下と嫌味先輩ことジークレイ様にもコーヒーの入ったカップを置いた。
「ありがとうございます」
キチンと礼を言ってくるあたりはやっぱりお育ちだけは良いですね、ジーク様。
私は事務所に戻ってくると、チョコクッキーを口に入れて愚痴った。
「まったくさぁ~なんだよ、あの嫌みめっ!」
「ミルフィーナ先輩…」
「なあに?パルン君」
パルン君はわぁ…と叫びながら手で顔を覆った。
「俺の…俺達の夢を壊さないで下さい!」
「夢って何よ?」
パルン君は眉を下げて執務室を見詰めてから深く溜め息をついた。
「ジークレイ様は俺達…軍人の憧れでもあるんです。侯爵家の次男で眉目秀麗、おまけに類稀なる剣技の才に恵まれて、魔術の腕も魔術師団長クラス…」
「ふんふん…それで?」
「どんな時でも格好良くて女性だけでなく、同性の俺達の憧れの先輩でもあるんですっ。なのになのにぃぃ…一歩事務所に入ればミルフィーナ先輩と痴話喧嘩でボロカスに罵倒されているなんて、想像してませんでしたぁ!」
「痴話喧嘩…では断じてないけど、そりゃあ…ご苦労様。」
パルン君はまた、わあぁぁ…と嘘泣きかどうかは分からないけど、机に顔を伏せて泣いている。
「また、喧嘩相手がミルフィーナ先輩って言うのがね~」
と、今月新しく入隊してきたクラナちゃん18才も溜め息をついた。
「ミルフィーナ先輩とジークレイ様って…こう、見た目はものすごくお似合いじゃないですか?」
クラナちゃんが毒を吐く。見た目はね~そこは結構言われてきたから自覚はあるよ。
クラナちゃんはうっとりとした表情で説明した。
「まるでお二人は一対の姿絵のように綺麗で…家柄も釣り合いが取れていて…お似合いなのに…中身がね。あ、ミルフィーナ先輩は見た目に反して可愛いから私はギャップ萌えで、最高でしたけど…あの嫌み…失礼、ジークレイ様がねぇ。私的には裏切られた気分です」
そうなんだよね、私達の仲を知らない他部署の方々からは私達…ジークレイ様と私は誰もが認めるお似合いカップル…らしい。
家柄…ジークレイ様は侯爵家の次男、私は公爵家の三女なのだ…
私は見た目だけは涼しげなクールビューティーらしい。私の性格を知ると皆「やられた!」とか「裏切られた!」とか言うのがパターン化している。
「ミルフィーナ先輩って見た目ツーンとしてそうですけど、中身は肝っ玉母さんじゃないですか。その見た目で戦場に出て『パッケトリア王国最強の盾』とか言われてるけど…中身は世話好きのお母さんじゃないですか!」
大事な事なのか…二回もお母さんを連呼されてしまった。
「今日のチョコクッキーも美味しいですね。流石、お母さん!」
パルン君が泣くことをやめた?のか復活してきてそう言ってきた。
「お~い、ミルフィ」
カイト殿下に呼ばれたので、「はい只今!」と返事をして執務室に入った。
「明日から留守の間は頼むね」
カイト殿下は警備計画書に受領の印を押して私に渡した。
「7日間の予定ですね」
「何もなければ、もう1日早まるかもだけど、もし魔物が出たら陣頭指揮は頼む」
ええ?私が陣頭指揮ぃ?
そういえば…カイト王太子殿下と一緒に隣国のブーエン王国に表敬訪問の護衛でジークレイ先輩もお出かけだったよね。
ああ…ヤレヤレこれで7日は嫌味から逃れられるのか~
と、思っていたらカイト殿下に
「本当はミルフィにも一緒についてきて欲しいんだけど…ね。ほら~そんな顔するから誘いにくいよっ!」
苦笑しながら言われてしまった。え~7日もジーク先輩と一緒なの~?って顔をしていたと思うけど、どんな顔だったんでしょうか?
そうしてカイトレンデス王太子殿下とジークレイ先輩達は隣国、ブーエン王国に旅立って行ったのだった。
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