旦那を守るのも楽じゃありません
過去からの誘い
ジークは顔色を変えて宛名を見ていたが、その封書をなんとグチャと手で握り潰した。
「‼」
義両親達も勿論、私もびっくりして息を飲んだ。
「ジークレイ…」
お義父様が声をかけると、ジークはイラッとした魔力を放った。
「こんなもの何で持って来たんだよ?しかも…フィーまで呼び出して…」
私にチラッと目を向けてから、お義母様にまでもイライラ魔力を向けている、私の旦那様。
義両親はジークに睨まれて顔色を失くしている。ちょっと、ちょっとっ!
「ジーク!ご両親になんて言い方されるのですかっ!」
私がそう怒鳴るとジークはハッ…としたように私を見てそして義両親を見て小声で、ゴメン…と謝っていた。
「でも何をそんなに怒っていらっしゃるのです?お手紙の相手はどなたでした?」
ジークは益々眉根を寄せて口を噤む。
「あの女だ!」
ジークの代わりにお義父様が忌々しそうに、あの女…と吐き捨てた。
あの女……?ご義両親がこんなにイライラして忌み嫌うあの女って…ああ、例の年上の元彼女かな?その彼女からお手紙きていたのね。しかしジークは握り潰した…過去に何があったんだろうか…
すると、お義母様が…そう言えばと口を開かれた。
「いつか聞こう…と思っていたのですが、ジークレイ…お前どうしてあの女と別れようと思ったのですか?私達がどれほど反対して怒っても別れなかったのに…何があったのですか?」
私もソレ気になります、お義母様!
ジークはチラチラと私を見た後に溜め息をついてから頭を掻いている。
「う~ん、と…そのぉ…」
「はっきりせんか!」
お義父様に怒鳴られてジークは渋々という感じで話し始めた。
「ラヴィア…あいつ、フィーを…ミルフィーナを叩いたんだ」
「まあっ!」
「!」
「なっ…」
叩いたって…あのデビュタントのことよね?どうして…どうして、ジークがあの彼女が私を叩いたことを知っているのだろうか?確か、あのデビュタントの日は個室に連れて行かれて二人っきりの密室で叩かれたはず…
私が探るような目でジークを見詰めていると、観念したのかジークは私の手を取って手を摩りながら悲しそうな顔をした。
「ごめんな…フィー、本当にゴメンな…あのデビュタントの日、会場に入ってミケランティスと話していたら、お前の友達の子爵家と伯爵家の令嬢が慌ててミケと俺を呼びに来たんだ。『ミルフィーナがラヴィアに連れて行かれた』って…」
お義母様が小さく悲鳴を上げた。
「俺とミケで手分けして客間を捜していたら、ラヴィアが客間から走って出て来た。客間の中は…ミルフィーナが残ってた…俺、耳はいいんだ。部屋の中でフィーは声を殺して泣いていた…フィーはちゃんとデビュタントのダンスに間に合うように帰ってきた。フィーの体からラヴィアの香水の匂いがした。俺はフィーから何か言い出すものだとばかり思って、フィーを見ていたんだけど、フィーは何も言わなかった。扇子で叩かれたんだろうか…少し髪が乱れていたし、涙の跡が分かった」
ああ…あのデビュタントの時、ジークがやけに見詰めてきていたのは、気づかれていたからなのか。ジークは私の頭を引き寄せて背中を擦ってくれた。
「フィーが何も言わないから…どうしようか、と思ったけどな。そもそもデビュタント会場にラヴィアは招待されていないはずだし、社交デビューする子息令嬢のいる貴族とエスコートを任された貴族…それなのにどうしてラヴィアが?と思って会場の貴賓室で数人の男達と談笑しているラヴィアに話しを聞きに行った」
「どう言ったの?」
私が聞くと、ジークは当時を思い出しているのか、イライラした魔力を放っている。
「知り合いの近衛に入れてもらった…悪びれもなくそう答えた。俺はその近衛の所にミケと元帥閣下と赴き、招待状の無い者を城内に入れたとして、職務規定違反を通告した。俺さ、ラヴィアに言ったんだ。さっきミルフィーナを叩いたんじゃないのか?って…そうしたらさ〜あいつ、フィーが自分に掴みかかってきたんだって…俺の恋人の自分にフィーが嫉妬したんだって言ったんだ」
呆れた…私にはジークに近づくなとかなんとか言って叩いたくせに…
「俺に嘘なんかついたって意味ないのにな〜そうしたらその近衛が、ラヴィアに『恋人って何だ!俺達は付き合っているんだろ』って言い出した。次々に自称付き合っている男達が参戦してきて…周りで修羅場になって…俺、冷めたんだ。急激に…」
ジークはまだ怒ってるのか、手に持っていた手紙を更にぐちゃぐちゃにした。
「あいつ…自分が侯爵家に嫁に入るのを皆が邪魔をするって周りの男達に怒鳴ってさ。そもそもだけど俺、まだ15才だし、結婚とか10年は先だろうし…おまけに親が薦める相手と結婚するよ、って言ったらラヴィアは俺を罵りながら近衛の彼氏に殴りかかるわ…周りの男達に物を投げるわで…醜悪だった。そりゃラヴィアは20才だったし、結婚とかに色々焦ってたんだろうけど、もし俺と結婚したとしても侯爵家には入れないって〜俺、軍人だから軍人の妻だよ?て言ったらまた暴れてた」
うわ…過去にもジャレンティア王女殿下みたいな泣き暴れを見てるのか…
「ラヴィアは俺とじゃなくて家と結婚したいのかな〜と勝手に振られた気分だった」
「そんなことがあったのね」
お義母様が溜め息をついた。お義父様は一つ咳払いをしてジークと私を交互に見た。
「実はな、ジークレイにも隠していたが、あの女は何度も家に押し掛けて来たんだ」
「げっ!」
「まあ…」
「あの女はジークと結婚の約束をしている。侯爵家の妻として早く取り成してくれ…と門前で喚き散らしていた」
「やっぱり家に入りたかったのか…」
そんなに侯爵家の次男の妻の座が欲しかったのか。
「ラヴィア様って伯爵家よね?もしかして、生活が窮されていたのかしら?」
ジークは顎に手を当てて考えている。
「確かに…あの時は俺も子供だったしラヴィアの家の状態とか気付かなかったけど、そうかもな」
「お前は良いカモにされたのだ!」
お義父様きっつ〜。当たってるけど…
ジークはお義父様に怒鳴られてシュン…としている。
「いいか?金の無心や言いがかりをつけてきても、毅然とした対応をするようにな!」
「はい」
ジークと私は帰って行くご義両親に返事をした。
さて
「ジーク、手紙読んでみましょうよ」
ジークは余程びっくりしたのか、若干飛び上がっている。
「ど、どうして…」
「どうしたもこうしたもないですよ。確かに手紙の内容はろくでもないことかもしれませんが、相手の出方を知りませんと対処も出来ませんでしょう?」
ジークは目を真ん丸にしている。
「ジーク、私もジークもあの当時と同じ、子供じゃありませんよ?」
ジークはぐちゃぐちゃにした封書を開けた。ジークは手紙に素早く目を通すと私に差し出した。
「やっぱりろくでもない内容だった」
あらまあ…私はジークから手紙を受け取ると、目を落とした。
手紙の内容を要約すると
王太子殿下の婚姻の儀に参加する時に都会に行く。その時に侯爵家に泊めろや!私にはその権利がある。私の事まだ未練があるんだろ?その時宜しくしてあげてもいいよ?
だった。
「すごい、身勝手な方ですね」
「ちょっと言い訳するとだな、15才当時の俺はその身勝手な所も小悪魔的な魅力に見えていた」
「小悪魔…」
「だけど、20才の時は小悪魔だか、今やってたらオバサン何やってんだ?になるよな」
確かに…10年も経ってまだ落ち着いてなかったら痛々しいものがある。
「あらそういえば、ラヴィア様って結局結婚はどうされたのですか?」
ジークは頭を掻いている。
「え〜と確か田舎の方に住んでいる男爵家に嫁いだはず…」
「既婚者ですか!」
これまたびっくり。既婚者で年上で、高位貴族のジークに宛てた手紙でこの内容…
「取り敢えず無視だ、無視!なんで親戚でもないのに泊めなきゃならん」
と、小悪魔に振り回されたお坊ちゃんは今日は非常に優しかった。お風呂でも私の体を洗ってくれて、ベッドに抱き上げて連れて行ってくれて、ずっとご奉仕してくれた。
男とは
やましい時ほど
王子様。
そんな王子様にご奉仕されて良い気分で眠った夜、夜中に目が覚めた。魔力の廻りが悪い…夕食のシチューが悪かったのか。
そうだ、目が覚めたついでに家の周りの魔力障壁の点検でもしようかと、玄関の方へ歩きかけて、目の前に急に誰かが立ち塞がった。
ジークだ、どうしたんだろう?顔を上げると怖い顔でものすごい魔圧を放って私を見下ろしていた。
「どこに行く」
「どこって玄関ですが…」
ジークはヒュッ…と息を飲んだ。
「出ていくのか?」
「はあ?」
ジークは泣きそうな顔をした。
「この家を出ていくのか?」
「何故私が自分の家を出ていかねばいけないのですか?出ていくのならば、当然ジークの方でしょう?」
「スミマセン」
「全く…夜中に目が覚めたので、障壁の点検をしようかと思ったのです」
ジークは、よがっだ〜と半泣きになりながら私に抱きついてきた。
「ホントにゴメンな…あの時、叩かれた時にフィーに話しを聞き出して、あいつに謝罪をさせればよかった」
私を抱き締めた後、鼻やオデコ…頬、唇とキスをしながらジークはそう言うけれど…
「どうかな~もしその当時ジークが私に事の真偽を聞き出して、ラヴィア様に謝罪させようとしても私がまたラヴィア様に暴言を吐かれたりして気分が悪くなっていたような気もします」
「確かに…より意固地になってお前に当たりそうだな…」
私は大きなジークの背中に手を回した。ふふ…大きな背中。
「だからもういいのですよ」
ジークの唇にキスをした。ジークは嬉しそうに私にお返しと言わんばかりにキスをしてくる。
「目が覚めたな~」
「もう少し夜更かしするか?」
ジークはすでに私のパジャマを脱がしにかかっている。もう、ここ廊下よ?
「ジーク寒い~」
「よしよし、じゃあ2人で温まろうかな!」
しまった…余計なことを言っちゃった…
私はジークに抱き抱えられてベッドに連れ込まれたのだった。
「‼」
義両親達も勿論、私もびっくりして息を飲んだ。
「ジークレイ…」
お義父様が声をかけると、ジークはイラッとした魔力を放った。
「こんなもの何で持って来たんだよ?しかも…フィーまで呼び出して…」
私にチラッと目を向けてから、お義母様にまでもイライラ魔力を向けている、私の旦那様。
義両親はジークに睨まれて顔色を失くしている。ちょっと、ちょっとっ!
「ジーク!ご両親になんて言い方されるのですかっ!」
私がそう怒鳴るとジークはハッ…としたように私を見てそして義両親を見て小声で、ゴメン…と謝っていた。
「でも何をそんなに怒っていらっしゃるのです?お手紙の相手はどなたでした?」
ジークは益々眉根を寄せて口を噤む。
「あの女だ!」
ジークの代わりにお義父様が忌々しそうに、あの女…と吐き捨てた。
あの女……?ご義両親がこんなにイライラして忌み嫌うあの女って…ああ、例の年上の元彼女かな?その彼女からお手紙きていたのね。しかしジークは握り潰した…過去に何があったんだろうか…
すると、お義母様が…そう言えばと口を開かれた。
「いつか聞こう…と思っていたのですが、ジークレイ…お前どうしてあの女と別れようと思ったのですか?私達がどれほど反対して怒っても別れなかったのに…何があったのですか?」
私もソレ気になります、お義母様!
ジークはチラチラと私を見た後に溜め息をついてから頭を掻いている。
「う~ん、と…そのぉ…」
「はっきりせんか!」
お義父様に怒鳴られてジークは渋々という感じで話し始めた。
「ラヴィア…あいつ、フィーを…ミルフィーナを叩いたんだ」
「まあっ!」
「!」
「なっ…」
叩いたって…あのデビュタントのことよね?どうして…どうして、ジークがあの彼女が私を叩いたことを知っているのだろうか?確か、あのデビュタントの日は個室に連れて行かれて二人っきりの密室で叩かれたはず…
私が探るような目でジークを見詰めていると、観念したのかジークは私の手を取って手を摩りながら悲しそうな顔をした。
「ごめんな…フィー、本当にゴメンな…あのデビュタントの日、会場に入ってミケランティスと話していたら、お前の友達の子爵家と伯爵家の令嬢が慌ててミケと俺を呼びに来たんだ。『ミルフィーナがラヴィアに連れて行かれた』って…」
お義母様が小さく悲鳴を上げた。
「俺とミケで手分けして客間を捜していたら、ラヴィアが客間から走って出て来た。客間の中は…ミルフィーナが残ってた…俺、耳はいいんだ。部屋の中でフィーは声を殺して泣いていた…フィーはちゃんとデビュタントのダンスに間に合うように帰ってきた。フィーの体からラヴィアの香水の匂いがした。俺はフィーから何か言い出すものだとばかり思って、フィーを見ていたんだけど、フィーは何も言わなかった。扇子で叩かれたんだろうか…少し髪が乱れていたし、涙の跡が分かった」
ああ…あのデビュタントの時、ジークがやけに見詰めてきていたのは、気づかれていたからなのか。ジークは私の頭を引き寄せて背中を擦ってくれた。
「フィーが何も言わないから…どうしようか、と思ったけどな。そもそもデビュタント会場にラヴィアは招待されていないはずだし、社交デビューする子息令嬢のいる貴族とエスコートを任された貴族…それなのにどうしてラヴィアが?と思って会場の貴賓室で数人の男達と談笑しているラヴィアに話しを聞きに行った」
「どう言ったの?」
私が聞くと、ジークは当時を思い出しているのか、イライラした魔力を放っている。
「知り合いの近衛に入れてもらった…悪びれもなくそう答えた。俺はその近衛の所にミケと元帥閣下と赴き、招待状の無い者を城内に入れたとして、職務規定違反を通告した。俺さ、ラヴィアに言ったんだ。さっきミルフィーナを叩いたんじゃないのか?って…そうしたらさ〜あいつ、フィーが自分に掴みかかってきたんだって…俺の恋人の自分にフィーが嫉妬したんだって言ったんだ」
呆れた…私にはジークに近づくなとかなんとか言って叩いたくせに…
「俺に嘘なんかついたって意味ないのにな〜そうしたらその近衛が、ラヴィアに『恋人って何だ!俺達は付き合っているんだろ』って言い出した。次々に自称付き合っている男達が参戦してきて…周りで修羅場になって…俺、冷めたんだ。急激に…」
ジークはまだ怒ってるのか、手に持っていた手紙を更にぐちゃぐちゃにした。
「あいつ…自分が侯爵家に嫁に入るのを皆が邪魔をするって周りの男達に怒鳴ってさ。そもそもだけど俺、まだ15才だし、結婚とか10年は先だろうし…おまけに親が薦める相手と結婚するよ、って言ったらラヴィアは俺を罵りながら近衛の彼氏に殴りかかるわ…周りの男達に物を投げるわで…醜悪だった。そりゃラヴィアは20才だったし、結婚とかに色々焦ってたんだろうけど、もし俺と結婚したとしても侯爵家には入れないって〜俺、軍人だから軍人の妻だよ?て言ったらまた暴れてた」
うわ…過去にもジャレンティア王女殿下みたいな泣き暴れを見てるのか…
「ラヴィアは俺とじゃなくて家と結婚したいのかな〜と勝手に振られた気分だった」
「そんなことがあったのね」
お義母様が溜め息をついた。お義父様は一つ咳払いをしてジークと私を交互に見た。
「実はな、ジークレイにも隠していたが、あの女は何度も家に押し掛けて来たんだ」
「げっ!」
「まあ…」
「あの女はジークと結婚の約束をしている。侯爵家の妻として早く取り成してくれ…と門前で喚き散らしていた」
「やっぱり家に入りたかったのか…」
そんなに侯爵家の次男の妻の座が欲しかったのか。
「ラヴィア様って伯爵家よね?もしかして、生活が窮されていたのかしら?」
ジークは顎に手を当てて考えている。
「確かに…あの時は俺も子供だったしラヴィアの家の状態とか気付かなかったけど、そうかもな」
「お前は良いカモにされたのだ!」
お義父様きっつ〜。当たってるけど…
ジークはお義父様に怒鳴られてシュン…としている。
「いいか?金の無心や言いがかりをつけてきても、毅然とした対応をするようにな!」
「はい」
ジークと私は帰って行くご義両親に返事をした。
さて
「ジーク、手紙読んでみましょうよ」
ジークは余程びっくりしたのか、若干飛び上がっている。
「ど、どうして…」
「どうしたもこうしたもないですよ。確かに手紙の内容はろくでもないことかもしれませんが、相手の出方を知りませんと対処も出来ませんでしょう?」
ジークは目を真ん丸にしている。
「ジーク、私もジークもあの当時と同じ、子供じゃありませんよ?」
ジークはぐちゃぐちゃにした封書を開けた。ジークは手紙に素早く目を通すと私に差し出した。
「やっぱりろくでもない内容だった」
あらまあ…私はジークから手紙を受け取ると、目を落とした。
手紙の内容を要約すると
王太子殿下の婚姻の儀に参加する時に都会に行く。その時に侯爵家に泊めろや!私にはその権利がある。私の事まだ未練があるんだろ?その時宜しくしてあげてもいいよ?
だった。
「すごい、身勝手な方ですね」
「ちょっと言い訳するとだな、15才当時の俺はその身勝手な所も小悪魔的な魅力に見えていた」
「小悪魔…」
「だけど、20才の時は小悪魔だか、今やってたらオバサン何やってんだ?になるよな」
確かに…10年も経ってまだ落ち着いてなかったら痛々しいものがある。
「あらそういえば、ラヴィア様って結局結婚はどうされたのですか?」
ジークは頭を掻いている。
「え〜と確か田舎の方に住んでいる男爵家に嫁いだはず…」
「既婚者ですか!」
これまたびっくり。既婚者で年上で、高位貴族のジークに宛てた手紙でこの内容…
「取り敢えず無視だ、無視!なんで親戚でもないのに泊めなきゃならん」
と、小悪魔に振り回されたお坊ちゃんは今日は非常に優しかった。お風呂でも私の体を洗ってくれて、ベッドに抱き上げて連れて行ってくれて、ずっとご奉仕してくれた。
男とは
やましい時ほど
王子様。
そんな王子様にご奉仕されて良い気分で眠った夜、夜中に目が覚めた。魔力の廻りが悪い…夕食のシチューが悪かったのか。
そうだ、目が覚めたついでに家の周りの魔力障壁の点検でもしようかと、玄関の方へ歩きかけて、目の前に急に誰かが立ち塞がった。
ジークだ、どうしたんだろう?顔を上げると怖い顔でものすごい魔圧を放って私を見下ろしていた。
「どこに行く」
「どこって玄関ですが…」
ジークはヒュッ…と息を飲んだ。
「出ていくのか?」
「はあ?」
ジークは泣きそうな顔をした。
「この家を出ていくのか?」
「何故私が自分の家を出ていかねばいけないのですか?出ていくのならば、当然ジークの方でしょう?」
「スミマセン」
「全く…夜中に目が覚めたので、障壁の点検をしようかと思ったのです」
ジークは、よがっだ〜と半泣きになりながら私に抱きついてきた。
「ホントにゴメンな…あの時、叩かれた時にフィーに話しを聞き出して、あいつに謝罪をさせればよかった」
私を抱き締めた後、鼻やオデコ…頬、唇とキスをしながらジークはそう言うけれど…
「どうかな~もしその当時ジークが私に事の真偽を聞き出して、ラヴィア様に謝罪させようとしても私がまたラヴィア様に暴言を吐かれたりして気分が悪くなっていたような気もします」
「確かに…より意固地になってお前に当たりそうだな…」
私は大きなジークの背中に手を回した。ふふ…大きな背中。
「だからもういいのですよ」
ジークの唇にキスをした。ジークは嬉しそうに私にお返しと言わんばかりにキスをしてくる。
「目が覚めたな~」
「もう少し夜更かしするか?」
ジークはすでに私のパジャマを脱がしにかかっている。もう、ここ廊下よ?
「ジーク寒い~」
「よしよし、じゃあ2人で温まろうかな!」
しまった…余計なことを言っちゃった…
私はジークに抱き抱えられてベッドに連れ込まれたのだった。