加瀬くんのカノジョはもうやめる。
立ち止まったままの私に気づいて、
加瀬くんがまた近づいてくる。
「早く行くぞ」
加瀬くんは私の腕に手を伸ばしたけど、
私はその手を避けた。
「え…」
加瀬くんは驚いた顔をして私をみた。
「芹奈?」
加瀬くんはどうして私の側にいてくれるの?
そこに…メリットはあるの…?
加瀬くんは今幸せなの?
「…好きだけじゃやっていけないってこういうことなのかな」
「どういう意味だよそれ」
今度こそ加瀬くんは私の腕をしっかりと掴んだ。
「加瀬くんは今幸せ?」
何か言おうとする加瀬くんの言葉を遮って私は続けた。
「…怒らせてばかりで、傷つけて、勘違いさせるようなことばかりして。加瀬くんはそれで幸せなの?笑顔にさせたいのに全くできなくて。」
「芹奈!」
加瀬くんは俯いている私の顔を両手で上に向かせた。
見上げた加瀬くんは焦った顔をして。