加瀬くんのカノジョはもうやめる。
小学生のくせに、
私のこと体張ってまで守ってくれて。
そんな人を好きにならずにはいられない。
「ほら、芹奈。準備できたぞ」
加瀬くんはカバンを持って玄関へ向かった。
「…好き。」
私は何も考えずそう言っていた。
届いたかな。
聞こえたかな。
何も言わずに加瀬くんは私の方を向き、
ズカズカ近寄ってくる。
「え、え?え!怖い!なに!」
そんなすごい勢いで近寄られたら怖いよ!
喚く私なんか気にせず、
加瀬くんは力強く私を抱きしめた。
「はぁ…遅いんだよ。」
「え?」
なにが遅いの?と
私の頭にはハテナがいっぱい。
「俺を好きだって気づくのが遅い。」
待たせるなと言いながら、
加瀬くんの口元は嬉しそうに微笑んでいた。
「加瀬くん…」
「ん…」
大好きと言おうとして、
ふと時計が目に入る。
「わぁ!加瀬くん!遅刻しちゃう!」
私は加瀬くんを押し避けて玄関に向かった。
「はぁ?今、キスひとつくらいするムードだっただろーが」
「変なこと言わないで!」
ギャーギャー言ってる加瀬くんを置いて、
私は学校へと向かった。
あれ。
これ付き合ったんだよね…?