海賊と宝石の歌姫
「肉じゃがと卵焼きがおいしかった」

「肉じゃがは母から教えてもらいました。母の作る肉じゃがはとてもおいしくて、味を再現したくて……」

「普段から料理をするのか?」

「はい。ご近所の人にご馳走したりもしています」

ふわりとカヤは笑う。セダの胸が高鳴り、「好きだ」と言葉が勝手にこぼれていた。

セダがうつむいた顔を上げると、カヤは少し困ったような、迷っているような微笑みを浮かべている。セダはカヤの手を優しく包み、まっすぐその目を見つめた。

「カヤ、俺はお前のことが諦められない。忘れることもできない。俺と一緒に来い。……愛しているんだ」

カヤはゆっくりとセダから目をそらす。その先に何を言われるのか、セダはわかっていた。

「……申し訳ありません。私はこの国から出てはいけませんので……」

「……そうか」

セダもうつむき、カヤは気まずさからか立ち上がってどこかへ走って行く。しかし、カヤを呼び止めることも、追いかけることも、セダにはできない。
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