海賊と宝石の歌姫
「……何かあったの?」

ライリーが心配げに訊ねる。セダは答える気力もなく、うつむいた。一人にしてほしい気分だったのだ。

それが伝わったのか、ライリーは剣を手に部屋を出て行く。セダはホッとしてその場に寝転んだ。

カヤと夕食の時、どのような顔をすればいいのかずっとセダは悩んでいた。食事を拒否したいが、作ってくれるキクたちに悪い。

夕焼けが沈んだ頃、キクがバタバタとセダのいる部屋に飛び込んできた。

「失礼します。カヤがどこに行ったかご存知ですか?」

その言葉にセダは体を素早く起こす。寂しさが消え、ドクンと胸が音を立てた。

「カヤはまだ帰って来ていないのか?」

セダの目の前でキクはコクリと頷く。その目は不安に満ちていた。セダの中にも不安が生まれていく。

「カヤは……先に帰ったはずなんだが……」

セダは、あの時カヤを止めなかったことを後悔する。キクは「わかりました」と言い部屋を出て行った。
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