海賊と宝石の歌姫

「セダさん……」

戦い続けるセダの後ろから呟く声が聞こえる。キクの声だった。セダが一瞬振り返ると、キクはまるで何かを決めたかのような表情を見せていた。

「セダ、危ない！！」

海賊フェニキスの船員と戦っていたライリーとゴドフリーが同時に叫ぶ。セダが前を向けば、グレンはコートから拳銃を取り出していた。

「隙あり、だな」

ニヤリと笑い、グレンが拳銃をセダのお腹に突きつける。アイザックたちは顔を真っ青にし、カヤは声にならない叫び声を上げていた。

「あばよ」

グレンが引き金に指をかけ、セダはここで死ぬのかと目を閉じる。セダが負ければカヤは一生グレンに捕われる。自由を奪われ、無理やりつなぎ止められるのだろう。

すまない、カヤ……。そうセダが思った刹那、ヒュンと冷たい何かがセダの背後から通り過ぎた。

銃の衝撃はいつまで経ってもこない。セダが目を開けると、目の前でグレンが「は……？」と呟いていた。その手には、先ほどまで握られていた銃はない。