海賊と宝石の歌姫
必死に叫んでいたカヤだったが、船員に口を塞がれてしまう。しかし、セダはカヤの気持ちが聞けて嬉しさでいっぱいだった。

「カヤ……」

胸が温かくなり、すぐにでもカヤを抱きしめてキスをしたくなる。その時ーーー。

「うっ……!!」

セダのお腹に強烈な痛みが走る。蹴られたり殴られたりしたものではない。

「セダ!!」

近くにいたアイザックが叫ぶ。セダのお腹には、短剣が突き刺さっていた。赤い鮮血が流れていく。

「セダ!!セダ!!」

ライリーとゴドフリーも敵を倒し、セダに駆け寄る。セダは苦痛に顔を歪めた。短剣がそれほど深く刺さっていないことが唯一の救いだろう。

「これで俺の勝利だろ?」

荒い息を吐き、グレンがセダを嗤う。アイザックたちはグレンを睨み付け、今にも飛びかかっていきそうだ。

「カヤの力なら治せるのですが……」

キクは捕らえられているカヤを見つめる。船員に口を塞がれ、カヤは歌えない。歌わないとカヤは傷を治すことができない。それをセダはよく知っている。
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