海賊と宝石の歌姫
「セダさん!!」

「カヤ!!」

互いに強く抱きしめ合う。カヤの温もりに触れ、セダは微笑む。そしてその頭にキスを落とした。

「さて、どうする?戦いを続けるか?」

アイザックが言い、全員が武器を手に海賊フェニキスを睨み付ける。グレンは舌打ちをし、命令をした。

「野郎ども、撤退だ!!」

船長の命令には逆らえない。みんなぞろぞろと村に背を向けて歩いていく。セダはカヤを抱きしめ、その光景を見つめていた。

「……俺とお前は敵だ。そのお姫様を狙っていることを忘れるなよ?」

グレンがセダに言うと、カヤはびくりと体を震わせる。セダは抱きしめる力を強くした。

「お前には渡さない。必ず、守り抜く」

グレンは背を向け、一度も振り返ることなく去っていった。セダはただカヤを抱きしめる。

戦いが終わった後の場所は、最初から何もなかったかのように静かだった。



海賊フェニキスからカヤを救出して数日。今日、セダたち海賊アレスはハナダから出航しなくてはならない。今日までこの村にいたのは、カヤを取り戻せた祝いのお祭りが開かれたためだ。

朝早くに目を覚ましてしまったセダは、縁側に座り込んでいた。今日で、カヤともお別れだ。
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