海賊と宝石の歌姫
青年は、自分のふた回り大きい海賊と戦い続けていた。銃が発砲されても怯むことなく、相手に突っ込んで斬りつけていく。

少女は青年が勇ましく戦う姿を、その黒い両目に焼き付ける。青年の表情は凛々しく、海賊たちが押されている。

少女はゆっくりと目を閉じる。数秒後、少女が再び目を開けた時、その顔に迷いはなかった。少女は立ち上がり、青年に背を向けて走り出す。ネックレスが少女の胸元で揺れた。

少女は後ろを振り返ることなく、暗闇の中を走っていく。木々の間を通り、村の入り口までやって来た。

少女はブナの木の幹の後ろに隠れ、荒くなった呼吸を整える。入り口には海賊の姿はない。

「……必ず、ここに戻って来ます」

少女は後ろを初めて振り返り、黒い煙が上がり続けている村を見つめた。泣きそうになるのを懸命に堪える。

呼吸はもう戻っていた。少女は入り口まで走ろうと前を向く。

「……お前、売れそうだな」

気がつけば少女の前に、茶色の髪に赤い目の整った顔立ちの男性がいた。黄色の装飾が施された赤いコートを着ている。海賊だ。
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