海賊と宝石の歌姫
「船長様もどうぞ召し上がってください」

「あ、ああ……」

名前を呼ばれないことは悲しいと感じたが、セダはカヤが用意してくれたコーヒーが飲めることが嬉しかった。

カヤの作ってくれたクッキーは、セダが今まで食べたクッキーの中で一番おいしかった。



その夜、セダは船長室で仕事をしていた。その時ドアがノックされる。

「誰だ?」

セダがドアを見つめると、「あたしだ。ライリー」とライリーが言いながら入ってくる。

「まだ入室を許可していないぞ」

セダはそう言うが、「別にいいでしょ」とライリーは笑う。

「で?何の用だ?」

セダは手にあった万年筆を机の上に置き、ライリーが座るソファの正面に立つ。

「いや、カヤと仲良くなれたのかなって……。あの子が作ったクッキーを食べたんでしょ?」

セダは昼間のことを思い出し、顔を赤くする。しかしーーー。

「カヤは俺のことを怯えている。俺のことを名前で呼ぶことはないし、俺に話しかける時は目をそんなに合わさない」
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