海賊と宝石の歌姫
その日の夜、セダはゴドフリーに借りた本を返そうと廊下を歩いていた。その時、曲がり角の向こうからカヤの声が聞こえてきた。

「……カヤ!」

セダの顔が明るくなる。どんなに疲れていても、カヤの声を聞くだけで元気になれる。

曲がり角を曲がろうとした時、セダは目の前にある光景に思わず本を落としてしまう。

船員とカヤが仲良く廊下を歩いている。その時、船員がカヤの額に唇を当てたのだ。セダは我慢できない怒りに体が震える。

「じゃあまた明日!」

船員はカヤに手を振り、自室へと向かう。

「はい、また明日」

カヤも微笑みながら手を振っていた。セダは本を床に落としたままカヤに声をかける。

「カヤ」

びくりと肩を震わせ、カヤはセダの方をゆっくりと振り向く。セダの声は自分でも驚くほど低かった。

「今から俺の部屋に来い」

セダがそう言うと、カヤは体を震わせながら「なぜですか?」と訊ねる。セダはカヤの腕を素早く掴んだ。
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