海賊と宝石の歌姫
海賊フェニキスの船の甲板で、カヤはグレンとともにいた。カヤの両手は後ろに回され、縛られている。カヤの細い腕を掴み、グレンは怯えるカヤを見てニヤリと笑っていた。

「船員たちが全て戻り次第、船を出す。それまでに助けが来てくれたらいいな」

グレンにそう言われ、カヤの目から堪えていた涙が流れ出す。

「泣こうが喚こうが、お前は俺のものだ。……絶対に帰さねえ」

グレンは頰を赤くしながらカヤのあごを掴み、自分の顔を近づける。その時ーーー。

「グアッ!」

「ウゥッ!」

船員たちが倒れていく音と、剣が交わる音にグレンとカヤは音のする方を見る。

「カヤ、助けに来た!!グレン、俺の女と船員に手を出すな!!」

剣で船員たちを倒しながらセダが言う。カヤの目からまた涙があふれた。

「……船長様……」

グレンは舌打ちをし、カヤを船員の一人に預ける。そして自身の腰につけられた剣を抜いた。

「あの女も宝も俺のものだ。……勝負するか?」

セダは剣を構え、不敵に笑う。

「望むところだ!!」
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