海賊と宝石の歌姫
あなたと見た凪 宵闇に溺れ
零れ落ちたのは 涙か砂か
あなたのために咲かせる
この胸にある夕顔の花
カヤは目を開き、歌い始める。その歌声にセダも、グレンも、船員たちも聴き惚れた。
船員が腕を離し、カヤはゆっくりとセダのもとへと歩く。そして、歌い続けた。
花びらで誤魔化し 瑠璃色はかき消される
幸せはいつも泡沫の夢に過ぎず
どれだけ待ち続けても
あなたのために泣くしかできないの
その時、セダは体から痛みが引いていくことに気付く。気がつけば腕の怪我が癒えていた。血も止まり、傷跡もない。まるで最初から怪我をしなかったかのようだ。
「これは、一体……?」
驚くセダだったが、船から脱出するのは今しかない。素早く地面に落ちていたグレンの小さなナイフでカヤの腕を縛る縄を解き、カヤを抱き寄せて甲板に立つ。
「しまった!」
ぼんやりしていたグレンは、セダとカヤのもとへと走る。