海賊と宝石の歌姫
カヤはペコリと頭を下げ、道を歩いて行く。セダはベンチに腰掛けてカヤを待つことにした。

穏やかな風が街に吹き、セダの近くに咲いている花を揺らす。セダはその花の美しさに目を細めた。か弱く、それでいて芯の強い輝きはどこかカヤに似ている。

セダの目の前を、花束を持った恋人たちが仲良さげに歩いて行く。カヤとこれから先もあんな風に歩けたらどれだけ幸せだろう。セダは悲しさがあふれそうで怖くなる。

「結婚式、あそこの教会で挙げようか」

「君のドレス姿、きっと綺麗だろうな〜」

そんなことを話しながら二人は歩いて行く。セダは羨ましさを感じた。

カヤにずっとそばにいてほしい。しかし、アイザックが言った通りセダたちの生きている世界はカヤにとって危険だ。それでもそばで笑っていてほしい。

カヤのことを考えていたセダは、話しかけられたことに気付かなかった。

「あなた、セダ様でしょ？」

ツンと鼻に入り込む香水の香りにセダは目の前にいる女性の姿に気づく。胸もとの大きく開いたドレスを着た派手な女性だ。
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