海賊と宝石の歌姫
「私ね、さっき彼にフラれちゃったの〜。とっても寂しい!」

セダの隣に勝手に座り、女性は胸をセダに押し付ける。

「……だから何だ?」

「ねえ、私を抱いて?あなたは顔が好みなら拒まないんでしょ?」

セダに女性は涙で潤んだ目を見せる。セダは「離せ!」と低い声で言い、腕を振りほどいた。

前のセダならば、この女性をすぐに宿に連れて行っただろう。しかし今は違う。セダの目には、今はカヤしか映っていないのだ。

「どうして私はダメなの?意気地なし!!」

女性はセダに詰め寄り、泣き喚く。セダは顔をしかめ早くカヤが戻ってくることを祈った。

「やめてください!!嫌ッ!!」

セダの耳にカヤの悲鳴が届く。それは小さな声だったが、セダの耳にははっきりと聞こえた。

「……悪いが、俺は今は一人しか愛していない。欲求を満たしたいだけなら他を当たれ」

セダは女性を引き離し、悲鳴が聞こえた方へと走り出した。
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