海賊と宝石の歌姫
「カヤ、嬉しそう」

「……ああ。ここはカヤの故郷だしな」

ライリーがセダに話しかけてきた。その目にはすでに涙が浮かんでいる。それでも、微笑んでいようとしているのがわかった。

「私、やっぱりカヤと離れたくない!」

ゴドフリーに植物について説明するカヤを見て、ライリーが堪えられなくなったのか涙をこぼす。セダもライリーと同じ気持ちだったが、何も答えることはできない。

好きならば、相手のことを一番に考える。セダは心の中で何度も繰り返した。

カヤは、ハナダの村で生まれ育った。海になど出ることはなかった人間だ。それなのにグレンに攫われ、奴隷としてこき使われ、傷つくことになった。カヤにとっての幸せは、怖い思いをした海よりもハナダの方がいいに決まっている。

おまけに、カヤは特別な力を持った人だ。海にいれば狙われる危険が高い。

カヤが歌っている時のことをセダは思い出す。この中で自分しか知らないカヤの秘密だ。あの光景も、カヤ自身も、とても美しくて誰もが見とれてしまう。
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