海賊と宝石の歌姫
きっとカヤは歌うことが好きなのだろう。セダは何となくわかった。歌っている時のカヤは、冒険をしている時のセダに似ている。

自由にここで歌っていてほしい……。

セダはグッと唇を噛み締め、独占したがる気持ちを追いやった。

山道をしばらく歩くと、山道専用の馬車が幸運にもお客を待っていた。そのため、その馬車で村まで行くことになったのだ。

「カヤ、村まではどのくらいかかるんだ?」

「一時間ほどです」

アイザックとカヤが話している。カヤは頰を赤く染めていた。そんな表情を見て、セダは胸を高鳴らせると同時に痛みを感じる。

いつもは元気なライリーとゴドフリーも、カヤとの別れを考えているためか静かだった。

馬車はゆっくりと動き出し、別れの時間が迫っていることをセダに教えるのだった。



嬉しそうにするカヤの言葉に、セダは微笑んで相槌を打つことしかできなかった。

馬車は細い山道を進み、小さな村へと到着した。瓦屋根の小さな家々が立ち並ぶ村だ。しかし、過去に海賊に襲われた跡はどこにもない。
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