海賊と宝石の歌姫
キクは黙って立ち上がる。庭には大きな桜の木が植えられていて、キクはその場所に向かって歩き出した。春にはきっと、美しい花を咲かせるのだろう。

「俺は……」

セダは迷いながらも口を開く。心から思っていることだからだ。

「カヤには、笑っていてほしいと思っている。でも俺のそばにいてほしいんだ。閉じ込めてしまいたいほど、カヤを求めている。心からカヤを愛しいと思っているんだ!」

キクは、ずっとセダに背を向けていた。ゆっくりとキクは振り返る。その目は申し訳なさそうだった。

「フジ族は、この国から出てはいけないという決まりがあります。申し訳ありませんが、それはできません」

「そんな決まりより、カヤがどうしたいかだろう!?じっくり話をさせてくれ!!」

セダは立ち上がって言う。そんな決まりなど聞いたことがない。

「申し訳ありません。これは決まりですので」

キクはそう言い、お酒を片付け始める。そして自室へと行ってしまった。

みんなが寝静まった中、セダは縁側でぼんやりと夜空を眺めていた。
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