海賊と宝石の歌姫



「セダさん、一緒に出かけませんか?」

朝ご飯を食べ終えた後、セダは急にカヤから言われた。こんなことを言われるのは初めてで、「は!?」とセダは驚いてしまう。

「……ダメでしょうか?」

じっと見つめられ、セダは顔をそらす。もうすぐお別れが来るというのに、胸の高鳴りは抑えられない。

「いや、大丈夫だ」

「よかったです。色々、ご案内しますね」

カヤはそう微笑み、支度をするためか部屋を出て行く。

顔を赤くするセダに、「……しっかりな」とアイザックが背後から声をかけてきた。セダはゆっくりと振り向く。

「どういうことだ?」

「カヤを困らせるなよ」

心配げなアイザックに、セダは切なげに笑う。

「大丈夫だ。最後に、カヤの気持ちを確かめるだけだ」

カヤの支度を待って一緒に出かける。もしかしたら、これが二人きりで過ごす最後かもしれない。

そう思うと、セダの中で想いは強くなっていった。
< 96 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop