BLACK REFLECTION -月の警告-
おそらく私をここに運んできてくれたであろう、時田、さん……の心配そうな声がした。
「ありがとう。……わりといいよ」
「そうですか。……急に倒れたから心配しました」
“急に倒れたから心配した”
……ということは、やっぱり彼がここまで運んできてくれたということ。
「そっか。……倒れたんだ、私」
「はい、学校の廊下で……、……どっかで見たことあるなって思ったら……、」
時田さんの言葉はそこで詰まった。
少し戸惑うようにしていた。
「なに時田。そんなにヤバいやつなの?」
朧さんが怪訝そうに彼に尋ねる。私のことなのだから私に聞けばいいのに。
案の定彼は、私の方を遠慮がちに見ながらも、ゆらゆらと朧さんの言葉を交わしていた。
「─────朧さん、私、卯月紗菜っていうの」