BLACK REFLECTION -月の警告-
はあ?女に飢えてそのガキすら狙ってる奴はどこのどいつだよ、と言いたくなる。
それに私、ガキじゃないし。乙女の柔肌に暴力ふるうとか、救いようのないサイテー野郎だ。
決めた。このままどこかに連れていかれる前に、なにがなんでも逃げ出してやる。
そんな意思を見せつけるように男たちを睨みつけると、男の眉がピクッと動いて、男がまた腕を振り上げる。
──殴られる。
そう思った瞬間、反射的に目を瞑っていた。
けれど、私の肌を打つ音も、やって来るはずの痛みも一向になく、恐る恐る目を開けると。
「───っ!」
息を飲むほど美しい男が、そこに立っていて。
私を殴ろうとしていた男の太い腕を、片手でいとも簡単に掴んでいた。
「……黒龍の和泉……」
さっきまで怒りを隠そうともせずに私に殴りかかってきた男が、青ざめたまま呟く。
“黒龍”
ウワサだけは聞いたことがある。
暴走しない暴走族───それって何?と言いたくなるけど、黒龍がいるおかげなのか、この辺りで夜中にバイクの音がすることは少ない。