愛染堂市
「あっ!!」


「何やってんだよ・・・」


「・・・すいません」


 ケツの青い制服が去り際につまづきメモに使っていたペンを落とした。

中年刑事は苦笑いし、俺も苦笑いでケツの青い制服を笑った。


「・・・な・中島さん!!」


ケツの青い制服はペンを拾う為に屈み突然叫んだ。

 ケツの青い制服の目線を辿ると、俺のバンのトランク下バンパー辺りに、ビニール包みを載せる時に付いた垂れた血の跡が一筋付いていた。


『ちっ!!』


 俺は屈みかけているケツの青い制服との歩幅を一気に詰める。

ポケットからカッターナイフを取り出し斬りつける。


「ぐっ!!」


流石に距離を縮めるには少し離れていた為、俺の気配に気付き制服は身をよじる。

刃先は芯を捉える事が出来ず、カッターは制服の顎の下の辺りからコメカミの辺りを流れた。

致命傷には至らなかったが、刃は深く入った為、切り口はパックリと開き血飛沫をふいた。

制服は屈み掛けの姿勢のまま膝を着き、そのまま崩れ落ちた。

俺は飛び込んだ姿勢のまま上体を捻り、中年刑事を視界に捉える。



『――んっ?!』


俺の視界の中に居るはずの中年刑事が、その場には居なかった。



 気配を間近に感じる。



 どうやら俺は中年を少し見くびっていた様だ。

中年刑事はおそらく、俺が制服に飛び込んだのとほぼ同時に俺に飛び込んできたのだろう。

俺は一瞬の判断を大事にして、それを意識して感覚を磨いてきた。


気付くと奴は俺の真横に居た。

面白い奴だ。

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