愛染堂市
横目に人影を感じ、俺はテレビとは逆の方へ目を向ける。
一瞬気配を失いかけて、ちょっとだけヒヤリとした緊張を背筋に感じたが、すぐに自分に馬鹿らしくなった。
―――なんの事はない。
目線を落とすと、小汚い黒人のガキが俺をじっと見ていた。
俺は自分の滑稽さを鼻で笑い、顔の向きをテレビに戻し、また始まったくだらないニュースを脳に入れるつもりもなく観始めた。
そしてヌルくなり始めた、弱めの炭酸の甘いコーラを口に含む。
『――ん?』
シャツの裾に違和感を感じる。
違和感の先に目を落とすと、先程の黒人のガキがヨレヨレのシャツから不自然に生えているような細い手でシャツの裾を掴んでいた。