愛染堂市
―――――京子


 マズい。

居ない。

またアドルだ。

金物屋を出ると、外で待っている筈のアドルと、アドルが見張っていた筈の荷物が無い。

あの子また一人で、フラフラとどっか行っちゃったんだ。

前みたいに犬でも追いかけてるんだろうか?

兎に角早く見つけないと、午後のバスに乗り遅れちゃう。

『夜の森を歩く自信無いのに・・・』

他の子達がアタシの不安をよそに、楽しそうに袖を引く。

アタシは手に抱えた荷物を落とさないように、必死にバランスを取りながら子供達をなだめる。

取り敢えずアドルを探そう。

あの子は脚が早いけど、子供の脚だし、アドルに持たせた荷物も決して軽くはない。

そんなに遠くへは行ってない筈。

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